第15回 カメリア・カレッジ開催(ゲスト講師:趙 衍捷氏)


【はじめに】

8月25日(水)第15回 カメリア・カレッジが開催されました。趙 衍捷 (ちょう えんしょう)氏がゲスト・スピーカー。
テーマは「中国事情とお年寄りの暮らし」

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趙 衍捷氏、カメリア・カレッジ開催前、カメリアの屋上にて

【中国の高齢者をめぐる状況】

中国の人口は約13億世界総人口の約2割を占める。その高齢化率は約10%。つまり中国における高齢者人口は約1.3億日本の総人口と同じくらい。

それだけ多くの高齢者を抱える中国なら、高齢者のための環境やそれを支える政策などさぞ充実しているかと思いきや、趙氏によればそうではないとのこと。

【そこにある混沌と混乱】

民間施設のバリアフリー化は極度に遅れています。介護に関する政府や民間によるサービスもきわめて限られている状態。高齢者施設の明確なカテゴリー分けがなく、混沌とし混乱している状況。
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趙氏は中国の高齢者施設をいくつも取材やヒアリングに訪れており、その時に撮影した写真を私たちに見せ、状況を語った。

古い10階建てのホテルを改造した高齢者施設。まわりの建物は壊され、残骸の中に、ぽつんと立ち尽くしているような雰囲気の建物。
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その建物のの内部にいたっては、通路が非常にせまいだけでなく、階段も急。エレベーターはありません。食堂などの衛生状態もお世辞にもいいものとはいえません。その施設では、重度の寝たきりの老人が最上階をあてがわれ、その階からほとんど出られないような状態になっている。

衝撃的な光景。思わず息を飲みました。

一方、こぎれいな高齢者向け施設もあります。趙氏によれば、それは台湾系の事業主によって運営されている施設だということです。日本の介護サービスをお手本としていて、サービスのレベルも中国の施設の中ではかなり高いとのこと。

さまざまな高齢者向け施設形態が法的な基準もなく、建てられ、運営されているのが中国の現状のようです。

【本格化する高齢者をめぐる政策・制度をめぐる議論】

しかしながら、まさに2010年、今年に入って中国政府は高齢者の生活や介護施設のあり方について本格的に議論をスタートした、と趙氏は語る。

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その後、見せてくれたのは中国政府が広大な敷地に建築している巨大介護施設群のパース。世界でも類を見ない巨大な介護サービス「地域」をまるごとつくろうとしているかのうよう。圧倒されました。

一部は完成していて、その内部の写真も披露されました。余裕のある空間、バリアフリー、清潔感のある真っ白な壁。この施設は中国における、今後の介護施設のモデル施設を意図してつくられているとのこと。

【おわりに】

まだ、混沌としている中国の高齢者や介護を巡る状況。しかし、それはまさにこれから劇的に変化していこうとしている、そのことを私たちは確信しました。

(2010年9月7日 阿久澤 騰)