カメリア・カレッジ 教育講座(第5回)平成23年3月5日


教育講座(第5回) H23.3.5

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●○● はじめに ●○●

2011年3月5日、特別養護老人ホームカメリアでカメリアカレッジで教育講座(第5回)が開講されました。カメリアカレッジは月1~2回程度水曜日の夕方に開講していましたが、地域の方がお越しになりやすい時間をと考え土曜日の午後の開講となりました。教育講座は1月~5月まで一ヵ月につき2回のペースで開催されます。この講座開講にあたっては旧亀島小学校の初代校長である三浦一郎先生の全面的なバックアップを受け、講師の調整や全体の流れなどのプロデュースをしていただきました。

今回は第5回目の開講。江東区立第三亀戸中学校校長の藤本渡先生による「本校の沿革と現状」と題した講演が開催されました。地域町内会の方、カメリアカレッジを通じてお付き合いのある方など26名の方の参加でした。

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講師紹介: 藤本渡(ふじもと わたる)。昭和53年早稲田大学教育学部卒業。江戸川区立松江第五中学に着任。昭和60年葛飾区立新小岩中学校、平成8年江戸川区立南葛西第二中学校を経て、平成10年江東区立深川第四中学教頭、南砂中学校校長を経て平成19年より現職、現在に至る。全日本中学校長会幹事、全日本学校保健会常任理事、江東区中学校体育連盟会長を務める。

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中学校の沿革: 昭和36年4月1日創立。当初は第一亀戸小学校仮校舎にて授業開始。平成23年度創立50周年を迎える。

今年50周年記念を迎える三亀中。中学創設までは学力を重視している学校に多くの子供が越境入学(墨田区内の中学)していた。昭和36年開校。当初は第一亀戸小学校を使用して授業が始まる。10月20日新校舎が誕生。この日が開校記念日。50周年は平成23年11月5日に実施予定。当時は校舎の作りは廊下がなく階段で教室が隔てられているなどの建築的にモデル校の存在であった。

現在の生徒数は541名。13学級体制。校舎は平成2年竣工。少人数授業を実施するようになりパーテーションで区切って授業を実施している。

学習指導要領はなかった。全国的に教育水準を一定にするために定められた。およそ10年に1回程度改訂される。

指導要領のない時代から、画一的な指導要領、行き過ぎから、生きる力、ゆとり教育へ(授業内容の削減)

学社融合(新しい教育基本法、学校教育法等で、地域と学校、家庭が教育の原点)。地域活動に参加するようになる。

学校の中で教職員に、地域のこどもの約4割は区内の他の地域から入学してくる。そのために中学の地域活動と子どもの暮らす地域とは一致していないことが多い(学校選択制のため)。地域に根差した教育を展開するためには努力が必要。

評価指標を定め教員、子供の成果指標を明示。国数英の3科目で補充教室を実施。ただし部活動とのバランスが困難。都大会、全国大会を目指す部もある。学習、学力があっての部活動。

全国学力・学習状況調査(中学校調査)平成22年:「朝食の摂取」:部活動への熱心な参加があり、朝食を食べずに部活動に参加する生徒もいる。「将来の夢や目標」:3年生の受験期になると将来の夢や目標を失いがちになるが三亀中は全国と比較すると目標を持ち続けている。「インターネット」:生徒間のメール等での誹謗中傷があり、複数校と連携して解決した事例が複数ある。「あいさつをしていますか」:年々あいさつをかえすこどもが増えてきたことを実感する。大人がやってみせることがいちばんの教育。「いじめは、どんな理由があってもいけないことだと思いますか」:徐々に教育効果は表れてきたがまだまだ足りない。

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校長として教育を考える:エピソード①;山本五十六語録:「やってみて、言って聞かせてさせてみて、ほめてやらねば人は動かじ」を校長として改めて感じる。エピソード②;教育の熱意は大切であるが、熱意にはやるだけでは教育の効果は上がらない。コップに水を入れるとき、水道の水を余り勢いよく入れすぎると、水がコップからはね跳んで半分も入らないことがある。チョロチョロとゆっくり入れた方がコップになみなみと入る。

中学生期の心:「自立心の芽生え(自己顕示が強い)」、「不満耐性(認める、個を育てる)が弱い」、「よい子を演ずること」、「ともに悩み、戸惑う」、「成長を見守る姿勢」、「親自身が戸惑いや心配の多い時期」 ?時代時代に求められる教育がある。50周年を迎えるにあたり地域の協力が必要になる。

○○○質疑、意見・質問○○○

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≪質問≫教員生活の中で、いちばん苦労された話は? またいちばん感動された話は?
≪回答≫苦労:場面場面で多数あるが学習指導要領の変更を教員となって6回経験したが、変更前後で全くちがった方向性の指導要領の変更が2回あり苦労した(1回目;横並びの時代〔体育での競争が否定された時代〕、2回目;昭和50年代の暴走族、暴力行為がまかり通っていた時代の苦労もあったが、現在は教員がこどもとぶつからない教育の時代であり苦労を感じる)。感動:期待した成長をどこかの場面で表現してくれる、表現をする場面は感動を覚える。教員冥利に尽きる瞬間。

≪質問≫(学習調査状況の)アンケートでの男女の違いはあるのか?
≪回答≫この調査では男女比較することはできない(男女別の調査を意図していないので反映されない)。別の調査では男女差が表れることもある。内面的なこと(いじめなど)では男女差が出現することも想定されるが検証していない。

≪質問≫朝食摂取の有無に男女差はあるのか?
≪回答≫男子よりも女子に摂取が少ない傾向がある。食事の用意をしていないことが朝食をとらない理由のひとつとして表れるようだ。家庭の事情もあるが家庭の協力も必要。

≪質問≫学校選択制は今後も続いていくのか?昔のような学区の復活はあるのか?子どもにとってのプラスになっているのか?地域との結びつきが希薄になってきており、子供同士が知り合いでないと親同士も知り合いでないことが多い。そのために地域で子どもを育てる基盤が希薄になってくるように思うが如何?
≪回答≫中学の立場から答えると、学校選択制は大きく変わることはない。一昨年学校選択制の一部が変更された。中学は地元を優先(学区域は残る)。その背景には実際に子どもたちが地域でクラブ活動を行っている。スポーツ関係でのつながりが強い。○○中学の部活動が強いから○○小学校からいっしょにいきましょうという流れになることがある。この場合選択から漏れれば(抽選から漏れる)地元の学区の中学に進学することになる。通学ロスについては、バス、電車を使うよりも徒歩圏での通学がベターだと思う。地域とのコミュニケーションは、学校選択制の中では学校の方針を伝えていくことが困難。コミュニケーションが薄くなっている。自分の暮らしている地域を大切にしてもらいたい。小学校と異なり部活動の関係、気持ちのつながりが強い。いじめと捉えるか否かは部活動では先輩後輩の関係など多様な視点で捉える必要がある。

≪質問≫三亀中はなぜそんなに人気があるのか?
≪回答≫三亀中は城東地区で中学創設より区外への越境通学がないようにと当初より学力、部活動に力を入れてきた。そのことが脈々と実績として残し歴史となっているのかと思う。それがステイタスとなっているのだろうと思う。現在は三十数校の小学校から生徒が集まっている。

≪質問≫部活動と学力との兼ね合いについてはどのように考えるか?
≪回答≫部活動をしているほうが時間の効率的な使い方を覚えるように思う。学習も時間を見つけて行うなど上手に工夫している。文武両道が校風としてうたうことが多いが部活動と学力低下との相関関係はない。まず学習が基本である。

○○○おわりに○○○
学校選択制の問題は当事者でなければ知ることのない話題でした。学校選択制や通学、部活動を絡めてのご講演は今の公立中学の課題を浮き彫りにしているのでしょう。ありがとうございました。「部活動と学力低下との相関はない。むしろ学業に専念しての中学生活であり、影響がでるならば部活動はしない」と喝破された場面では、さすが体育をご専門とされている先生ならではの説得力あるお話しでした。これまでのカメリアカレッジでの小学校の問題とは質的にも変化してきました。子を育てる視点、地域で子どもを育てていく視点と学校選択制との関係の中からどのようにして、地域を大切にしていくのか、学校現場だけではなく、地域にも問われている課題なのでしょう。

次回は3月19日(土)14時~16時に「幼稚園・保育園一体化の今日的課題」-乳幼児はどのように育てられることが幸せか-の演題で千代田区教育委員会の元教育委員長・栗岩英雄先生に講演していただきます。幼稚園・保育園の一体化は保育園の待機児童数の解消が行政課題となるなかで今日的な問題です。ご興味のある方は是非ご参加ください。参加無料です。参加・聴講をご希望される方はカメリア会(03-5836-2311)までお問い合わせください。